今回は最近流行りの分散型取引所であるKyber Networkとそこで使われる専用トークンKyberNetwork Crystal(KNC)とは何かの解説をしていきます。
目次
仮想通貨Kyber Network Crystal(KNC)の基本情報
最大供給量:226,000,000 KNC
システム(アルゴリズム):イーサリアム、ERC20
公開日:2017年12月12日
国:シンガポール
公式サイト:kyber.network
ホワイトペーパー:KyberNetwork/Whitepaper.pdf
Kyber Networkは、デジタル資産の交換と変換を可能にする分散型の交換機です。
現在(2018年3月4日時点)の仮想通貨ランキングで76位。
価格は1KNC = 193円です。
ここでは取引所内部のいろいろな役割を不特定多数のユーザーに分担して行わせて、スマートコントラクトで制御。
全体として、分散型取引所の形で成り立つようにしているようです、
分散型取引所と通常の取引所の違い
簡単に言えば、取引所自体のリスクを分散させるという意味で、分散管理できる取引所、分散型取引所(DEX)と呼ばれます。
具体的に一体何が分散なのかというところを話すと、個人のお金や秘密鍵など、通常の取引所で一箇所に保管する情報のほとんどをそれぞれ個人で所有するということで、このタイプの取引所では重要な情報を分散して個人管理することになります。
一方で、通常の取引所では個人の秘密鍵やお金はすべて取引所のサーバ、もっと言えばその業者に預けてこっちではアカウントを使って毎回それにアクセスする形で取引を進めます。
分散型取引所は安全なのか?
コインチェックのXEM流出の件など、最近の仮想通貨取引所の状態を見る限りでは普通の取引所はかなり危険な状態になっているものと思われます。
その中で、誕生したのが、このタイプの取引所ですが、実際は自分の持っているウォレットを繋げる(インポートする)必要があるので、はじめは躊躇することがあると思います。
ただし、もちろん実際には秘密鍵やウォレットのパスフレーズが相手に漏れることなく取引ができます。
では、今まで分散型取引所でハッキング被害がないかというとそうでもありません。
2017年12月には分散型取引所で知られるEtherDeltadeで、少なくとも308ETHが盗まれています。
mashable.com
ただしこれに関しては、取引所自体の偽サイトを作ってそれに誘導する手口が使われており、実際に取引所自体の脆弱性をついたものではありません。
残念ながら結局、どれだけ取引所のセキュリティーをあげても、完全に安心はできないようですが、ハッカーができることは限られてくることは確かのようです。
分散型取引所はめんどくさい?
従来からある分散型基本的に管理者がおらず、すべてをプログラムで管理しているので、取引や入出金など、あらゆる場面で手数料がかかります。
また、その都度ブロックチェーンに記録する場面が多いため、はっきり言って取引完了までの時間が圧倒的に遅いです。
実際EtherDeltaでは一回の取引に数十分かかることもあります。
では、今回のKyber Networkもそうかというと、それは違います。
従来の分散型取引所とKyber Networkの違い
Kyber NetworkではKyber contractと呼ばれるイーサリアムで使われるスマートコントラクトを利用した取引方法を実装しています。
取引のすべては基本オンチェーン(全部メインチェーン上)で行い、資産管理はオフチェーンで人員(リザーブマネージャー等)を使っています。
取引にかかる手数料はガス料金のみ。
入金出金の概念はなく、ウォレットをインポート(一時的に読み込ませる)することで、ウォレット間の交換を可能にしています。
Kyber Networkの仕組み
Kyber Networkのスマートコントラクトにより、ユーザーは好きなトークンを毎回送信アドレスなどを使うことなく、ワンクリックで送信し、市場レートに従って異なるトークンを受け取ることができます(インスタントトレード)。
流動性を高めるために、複数の仮想通貨入れてある貯蔵庫(リザーブ)と言うものをネットワークに接続しています。
実際に交換する際は数あるリザーブから一番良いレートを自動選択して、ユーザーに提案します。
この一連の交換作業にはリザーブコントリビュータ、リザーブマネージャーとKyberNetworkオペレーターが関与します。
・リザーブコントリビュータは交換用のトークンの在庫を提供します。
・リザーブ・マネージャーはその在庫トークンと、オフチェーンの自動システム上で実際の予約を管理し、為替レートを決定、料金をKyberNetworkに提示します。
・KyberNetworkオペレータは、「オペレータダッシュボード」を使ってリザーブになるエンティティー(参加者)の追加と削除を担当し、ネットワーク内のトークンのペアを一覧表示/削除します。
※初期のオペレータはKNチーム(関係者)が担当します。
形だけ見ると、仮想通貨交換所のChangellyに似たようなものを感じますが、KyberNetworkで管理している通貨はすべてイーサリアム上のスマートコントラクトで管理されていることになるようです。
また、通常の取引では、一つのorder book(板)が存在しますが、この取引所ではリザーブマネージャーと呼ばれる人が通貨の受け渡しの一旦を担っていますので、板が存在しないです。
プラットフォーム内では少なくとも取引ユーザ、コントリビュータ、マネージャー、オペレーターの4者がそれぞれ働いて全体の取引作業を進めていきます。
ただし、実際の取引ではこれらの管理者の返答を待つ必要なく、単一トランザクション内ですべて瞬時に実行されます。
使う側からみると、一瞬で交換できているように見えるわけですね。
KyberNetwork operator(オペレーター)とは
全体の管理や、人員の選定に近いことをやるようです。
当初はKNの関係者がこの役割を担うようですが、後から既存のエンティティー(参加者)から選抜してオペレータに専任させるようなことが言われています。
Reserve contributor(リザーブコントリビュータ)とは
自身の資産を在庫として提供し、それをリザーブマネージャーが管理。
見返りにReserve managerから分配される収益が共有されます。
※Reserve(リザーブ)とは、交換用の控えトークンを置いておく場所のことで、リザーブは複数のReserve Contributor(リザーブコントリビュータ)と言うもので構成されています。
Reserve manager(リザーブマネージャー)とは
リザーブを管理しているのはKyber Network自体ではなくこのリザーブマネージャーになります。
それをたくさんのリザーブマネージャーがスマートコントラクトで管理することで、実質分散管理されていることになります。
このリザーブマネージャーになるにはユーザーがオペレーターに登録し、オペレーターの承認を得る必要があると公式では言われています。
参加して実際にリザーブを操作するにはKyber Network Crystalトークンが必要で、交換が行われるたびにこれを支払います。
取引レートはそのリザーブマネージャーが「リザーブマネージャポータル」と言うツールを利用して自由に決めることができ、その分の価格差(スプレッド)の一部がその人の利益になりますが、KyberNetworkは一番良いレートを選んで表示するので、あんまり下手な数値は設定できないようになっているみたいです。
また、価格設定においてはいろいろと不正や間違いがないように(おそらくスマートコントラクト等によって)対策をかけています。
インスタント・トレードとは
通常は、トランザクションの立ち上げ、承認までである程度の時間を要しますが、このインスタント・トレードでの交換または変換要求は、単一のトランザクション内で直ちに実行されます。
ユーザーは元のトークンを転送した瞬間に交換されたトークンを取得します。
デポジットや確認、待ち時間は必要ありません。
オプション契約
コールオプション・プットオプションは、契約の所有者に、同意された価格で暗号資産を購入、または売却する権利を与えます。
また、通常の取引(または上記のオプションに加えて)に追加オプションとして、プレミアム機能を持たせることも想定しています。
これによってユーザーは不利な価格変動を回避することができます。
Kyber Network Crystalトークン
簡単に言えば、プラットフォームの第三者レート提供者であるリザーブマネージャーが支払う利用手数料として使われます。リザーブマネージャーはスプレッドによる利益があるので、その代わりに取引量に応じて決められたKNCトークンを支払います。
また、その他ではユーザーをKyber Networkのスマートコントラクトに導いたウェブサイト/モバイルアプリケーションに報酬として支払われます。
なお、最終的に運営費用やパートナーへの支援費用として支払われたKNCの残りは流通から取り除かれます(Burn)。
これによって今後トークン自体の価値は上がっていくものと思われます。
決済API
異なる通貨の交換機能を利用して、これをそのまま決済に利用することも考えられています。
通常の支払いに対して、こっちでは好きな通貨で支払い、任意のサービスや製品を購入することができるようになります。
一例として、ICOでの資金送信をあげると、
こちらから任意のトークンをKyber Networkに送信して、プラットフォーム側でそれをETHに変換。
そのままICO元へETHを流して、支払いを完了させることができます。
Kyber Networkの将来性
公式の関係者一覧では、Ethereumの創始者であるVitalik Buterinが開発に関わっていることがわかります。
また、技術内容で見る限り、Trustless取引(第三者の信用関係なく信頼性が保てる取引)で、クロスチェーン(異なる通貨同士の交換)をサポートするため、PolkadotやCosmosのようなプロトコルを採用する考えを示しています。
もし、それができれば、普通の取引所メリットは無くなりますね。
・・・どこかの報酬バラマキ取引所にも見習ってもらいたいものです。
最近では、独立した流動性プロバイダーである「Prycto」と言うのがKyber Network Exchangeの第三者割当増資(独立したリザーブ・マネージャー)として稼働していることを発表しました。現在はKNC、EOS、OMG、BATのトークンがこのプロバイダによってサポートされています。
blog.kyber.network
対応するウォレットではEthereum、ERC20トークンをサポートするTrust Walletと統合されています。
さらに今年に入って本格的に稼働し始めた同プロジェクトは、今新規参加者に向けてキャンペーンを実施しています。
Kyber Network上において一定の条件をクリアした人にいくつかのKNCトークンが与えられるようです。
coinchoice.net
ロードマップ
2017年夏:MVPバージョンの開発
基本バージョンのKyberNetworkをテストネット上に展開
2018年Q1:KyberNetworkローンチ
Etherとのトークンの間の取引と代理支払いをサポートから
2018年Q2:KyberNetworkの市場の拡大
サポートトークン数を増やしたり、パートナーと協力
2018年Q4:先進金融商品の取引をサポート
メロンポートなどの分散型ヘッジファンドプラットフォームの適応
2018年終わりから2019年初期:
クロスチェイントレードのサポート
※ここを一番期待しています。
Kyber Network Crystal取り扱い取引所
現在は以下の海外の取引所で扱っています。
huobi.pro
Binance
Liqui.io
huobiを始め、多くの取引所で採用しています。
Kyber Networkの使い方
すでに試験的に使えるような状態になっているので、実際に使ってみましょう。
なお、現時点では1回の取引につき3,000米ドルまでの取引が可能で、1日の取引限度額は最大15,000ドルとなっています。
※現時点(2018年3月5日)では試運転段階であり、事前にホワイトリストへ登録した人のみが使用できるようです。
使い方はリンク先でも紹介されています。
bitcoin-trade.info
取引で行うことは以下の作業
・ウォレットのインポート
・取引通貨の選択
・実行
まずは公式サイトへいきます。
中央にある「Exchange now」をクリック。
中央の規約にチェックを入れて「GET STARTED」をクリック。
MetaMask:
ERC20専用のウォレットです。
基本的にはMyEtherWalletと同じような感覚で使用できます。
JSON:
MyEtherWalletを使っているなら知っているはずです。
初めて触る人は、そこで秘密鍵情報を入れたJSONというファイルを作ったはずですが、それを使う方法になります。
TREZOR/REDGER:
おなじみのハードウェアウォレットですね。
外部ウォレットとの連携もできるようです。
いずれも外部操作によって連携させます。
KEY:
秘密鍵をダイレクトに入れて使う方法です。
一番シンプルですが、直接サイトへ入力させるのはちょっと躊躇しますね。
MetaMaskでKyber Networkを使う
今回はMetaMaskで認証させてみます。
事前にMetamaskに入って起動させておきます。
それで「Import Address」から一番右のMetamaskを選択。
するとこのプラットフォーム上でウォレットが連携して勝手に開きます。
あとは交換する通貨を選んで、交換を実施。
前述したように売買の様子が見える「板」の存在はありません。
レートはリザーブマネージャーに一任する形になっていますが、こちらでも一応レートの設定はできます。
(もっとも、下げる方向での設定になると思いますが)
また、手数料もこっちで決めることができ、その分取引スピードに影響が出ます。
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