最近の仮想通貨取引所は、スタートアップ企業のような新しい新興タイプの取引所がたくさん出てきています。
いずれも、通常の取引行為以外に何らかの恩恵が得られる仕組みを採用していますが、今回解説する中国発のKuCoinは配当という形で、他の取引所と差別化しているようです。
目次
最大供給量:181,043,076 KCS
システム(アルゴリズム):イーサリアム、ERC20
公開日:2017年8月4日
開発:中国(香港)/新興取引所KuCoin
CEO:Michael Gan
公式サイト:kucoin.com
ホワイトペーパー:https:kucoin.com/whitepaper
Kucoinは国際的なブロックチェーン資産交換所です。
現時点で仮想通貨ランキングで51位。
価格は1KCS = 447円です。
公式によると、Kucoin交換プラットフォームの技術的アーキテクチャ(論理的構造)は2013年にはすでに開始されていたそうです。
また、このKucoinプロジェクトのCEOであるMichael Gan氏はアリババ関連企業の元アント・フィナンシャルの元技術者です。
中国では現在仮想通貨・ICOなどが禁止されていますが、香港は政府の特例地域に指定されているために現時点では影響を受けにくいようになっています。
これに関連する情報ではインセンティブや配当関係の情報がメインに展開しているようですが、実際のプロジェクトの実態はどうなっているのか気になりますね。
一通り、内容をみたんですが、他のプロジェクトと比べると、全体として比較的集権的(非集権的ではない)な気がします。
KuCoinプラットフォーム
仮想通貨取引所としてのKuCoinは、現在100種類程度のアルトコインの取引ペアがあります。
取引手数料:0.1%
送金手数料:BTC/0.0005BTC,ETH/0.01ETHなど、固定手数料
参考情報:news.kucoin.com
取り扱い通貨は、比較的マイナーなものが多く、逆に他が採用しているランキング上位にあるアルトコインは扱っていない場合があります。
UI・UX(見た目とか)では、「ファーストトレーディング」と呼ばれる即座に通貨を交換できる仕組みを搭載しており、マーケット情報の仮想通貨ペア一覧から直接交換ができるようになっています。
実際の取引画面も他のものと比べると、見やすく、全体的にユーザーフレンドリーな設計になっています。
KCSトークンとは
結論から言うと、現時点では、ただのサービス付加のためのポイントです。
一見、取引手数料に使われているようにも見えますが、公式ではあくまで割引ボーナスの一部として記載されています。
仮想通貨としての能力はイーサリアムから引き継いでいますが、その価値を証明する場所が同運営元しかないため、リスクに関することで言えば、極めて集権的だと思います。
また、トークンの流動自体は、少なくとも四半期(三ヶ月)ごとに純利益の10%以上を運営がKCSによって買い戻しを行い、回収されたKCSトークンはBurn(破棄)します。
初期段階で投資家やファウンダー(運営者)が一億枚のトークンを所持していますが、いずれのトークンも強制保持期間があるようです。
ファウンダーの保有しているKCSトークン7000万枚は4年間ロックアップ(市場流出禁止)
投資家の保有しているKCSトークン3000万枚は2年間ロックアップ(市場流出禁止)
一箇所でしか、扱えない仮想通貨は通貨と言えるのでしょうか?笑
(※2018年3月1時点の話です)
各種インセンティブボーナス
KuCoinプラットフォームではKCSトークンを利用したインセンティブ(ボーナス)が存在します。
また、通常の取引手数料である0.1%から割引する制度も採用しています。
kucoinボーナス
KCSトークンボーナスプランと呼ばれる一種の還元のようなシステムを採用しており、ある取引ペア内において、取引所の取得するすべての手数料の50%が、kucoin保持者に保持数量に比例して毎日配当されます。手数料の還元という意味ではBinanceと同等のサービスになりますね。
一見ただでもらっているように見えますが、取引所がもらった手数料内からの計算なので、あくまで還元の範囲です。
捉え方によって手数料の割引とも言えますが、配当をもらう権限がkucoin保持者と限定されおり、配当計算はその数量の保持に依存するために、kucoin保持量によっては通常の還元範囲以上の恩恵が受けられるはずです。
これによって外観からみると、ただKCSを持っているだけで配当が入るような形になっています。
取引手数料割引機能
現在はKucoin内でKCSを保有しているユーザーに対して「Trading Fee Discount」と呼ばれる取引手数料の割引が適応されます。
これは通常の手数料0.1%からの割引で、1000KCS保有につき1%の手数料割引として最大30%まで適応されます。
ちなみに、最大までで必要な数量は30000KCSとなるので、日本円で1000万ちょっと必要です。
その他のボーナス機能
現在はまだ搭載されていませんが、KCSの保有があるレベルに達すると、マンツーマンによる投資相談や、サービスに対するファストパスのサービスを取り入れる想定をしているようです。
KuCoinアプリケーション
この取引所はiOSとAndroidの専用モバイルアプリを提供しています。
news.kucoin.com
ちなみにKucoinアプリは、App storeやGoogle Prayからダウンロードできません。
なので、AppleのiPhoneで使う場合は、通常のアプリのダウンロードとは違った操作が必要です。
今の時代に、個人でも審査してもらえるApp Storeになぜ登録しないのかはちょっととよくわからないです。
(ブランドとして他のアプリと差別化したかったのか?)
また、そのせいでこのサービスでは通常操作と違った操作が必要なこともあり、ダウンロードがうまくいかないといった声も聞きます。
また、アプリのダウンロードではApp storeの審査がないため、実質その信頼性は完全にKuCoinに一任された上でダウンロードする必要があります。
まだ、ベータ版なので、運営元で直接リリースしたかったのかもしれませんね。
KuCoinの将来性
トークン自体の価値はサービスのインセンティブにほぼすべて依存しています。
プロジェクトは一見仮想通貨技術を取り入れているように見えますが、例えばブロックチェーン技術を使った分散管理をしたり、取引の流動性を上げる仕組みを搭載したりするようなものは見当たりません。
はっきり言えば、インセンティブに頼った取引所のように見えます。
その証拠にホワイトペーパーにも技術的な記載はほぼなく、サービスに関する説明事項やICOの内容が記載されている程度です。
※配当やボーナスに関しては、通常のマイニングやPoS報酬とは違ってその管理が企業に一任されるため、運営の都合によっていくらでも変更が効きます。安易に配当がもらえるからといって大量に保持すると後で大変な目に合う可能性もあります。
現にこの配当やボーナスに関しては実際に減少するとの話も出ています。
はじめまして!
配当が減少する認識はありませんでした。
もし減少するのであれば価格上昇はしにくくなりますね。
ホワイトペーパーに記載されてるのでしょうか?
ご教示頂けると助かります。— たけぽん (@yukihirotakeda) 2018年1月9日
また、今後のプランに分散型の取引所を採用するとの旨が記載されているので、この先同トークンがこれの手数料として活躍する可能性があるそうですが、気になることはホワイトペーパーのプラン一覧にそのことが書かれていないこと。
もっとも、それらの問題以前に運営元が、仮想通貨の規制が激しい中国であるということが大きな足かせになっているようにも見えます。
単なる新しい仮想通貨取引所としてみれば、まだ大きく評価のハードルは下がるでしょうが、現状は配当とインセンティブによる集客に頼った取引所のように見えますね。
KuCoinのセキュリティー性
一方で、単なる取引所としてみると、総合的に使い勝手は良く、少なくとも国内の並の取引所よりもはるかに性能が高いように見えます。
まだ運営を開始した直後のため、特にハッキング情報などもないようです。
何れにしても、セキュリティーの高さは今後時間とともに証明されてくると思います。
KuCoinは発行元でしか使えない
気になる点は、未だこのトークンが自社でしか交換できないこと。
現時点ではこの仮想通貨KuCoinは他の取引所では全く扱っていません。
万が一、同サービスで取引が中断された場合は、KCSトークンに変えた資産は使い道がなくなる可能性があります。
実際現状では、取引所がストップすると、運営が何らかの対応をしてくれない限り、保持しているKCSトークンは既存通貨に交換できません。
まるで、お金を使ってある種のポイントを運営元で売買しているような感じです。
※国内でもCOMSAやその他の独自トークンがありますが、コインチェックの件同様、何かあった時の対応に関しては国内ではほとんどの場合、金融庁が動きます。
確定申告補助サービス「Totallu(α)」
ちょっと若干話が逸れるかもしれませんが、関連したサービスとして、フィリピンに拠点を置くTuitt, Inc.から、同取引所とEtherDeltaに対応する確定申告の補助サービスが開始されています。
同サービスでは、取引データを、仮想通貨所得計算サービスが読み込めるフォーマットに自動変換します。
Googleのアカウントでログイン後、取引履歴をアップロードし、統一フォーマットをダウンロードすることが可能となります。
現在対応している所得計算サービスはCryptactとなっています。
公式:totallu.com
KuCoinは危ないのか?
個人的には、
取引所は使ってもいいと思う。
トークンはいらない。
結論から言うと、取引所の機能は現時点では問題なく使えます。
欲しい通貨があれば、普通に使ってもらっていいと思います。
ただ、開設が2017年7月と、まだ運営が始まったばかりのため、今後の同社の運営リスクが全くわかリません。
同取引所で扱っているこのKCSトークンは今の所ここでしか機能しない(しかもボーナスとか)ですし、仕組み上、価格の上昇に伴って新規参入者に対しては恩恵が小さくなるようにできています。現時点でわざわざこのトークンを購入する意味はあまりありません。
配当では、わずか数円の節約のために何百KCS(今では数万~数十万円規模)を同取引所を信頼した上で所持する(担保する)必要があります。
kucoinshares.comで所持数に対しての配当が計算できるのでやってみればわかります。
手数料でも、大量のKCS(数千単位)を保持した上で、一度に大量の取引でもしない限り、その恩恵は受けることができません。
逆に差額利益を狙って同取引所でKCSトークンの売買を繰り返す方法もあるとは思いますが・・・。
この仮想通貨KuCoinはあくまでおまけ程度と考えるべきでしょう。
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